100年先を見据える、家づくりの原点回帰

昨年、再び鹿児島を訪れる機会を得ました。目的は「日本一優良工務店」と評される、とある工務店さん(シンケン)での設計研修です。前回は完成物件の見学が中心でしたが、今回は実際に手を動かしてプランを考える、濃密な三日間でした。

・課題から始まる設計の旅

事前に出された設計課題には、土地の形状・家族構成・バイク用インナーガレージの要望などが盛り込まれていました。特に印象的だったのは、「景色をどう切り取るか」「周囲とのつながりをどう活かすか」という点。

図面上でプランを練る中、自然との距離感、駐車場の配置、視線の抜け方など、普段の自分の設計手法と向き合うきっかけになりました。

 

・ 現地で見た“答え”

当日、その課題の「正解」となる住宅を実際に訪問。驚いたのは、その家がすでに建っており、スタッフさんのご自宅だったこと。私たちが考えたプランと現実の建物とのギャップに、思わず圧倒されました。

変形地であるにもかかわらず、土地の特性を最大限に活かした配置。森と海を望む借景を取り込み、周囲から一線を画すような静謐な佇まい。まるで旅先の宿のような非日常感がそこにはありました。

ダイニングからキッチンの窓まで視線が抜けている

・「当たり前」を疑う視点

研修では、駐車場一つをとっても「外車だったら?」「左ハンドルだったら?」と、日常の設計で見落としがちな視点を次々と投げかけられました。

また、インナーガレージと玄関のつながり、隣家からの視線を遮るフェンスと植栽の使い方など、細やかな配慮が積み重ねられていました。

・ “居場所”をつくるということ

特に印象に残ったのは、隣家に近接する場所に設けられた“くつろぎの居場所”。細い通路の先に設けられた窓辺のカウンター席には、視線を遮る工夫が施され、外からの影響を感じさせない静かな空間に仕上がっていました。

外から見るだけでは分からない、内からの視点の大切さを実感しました。

 

玄関から入ってキッチンへ行くまでの通路をディスクスペースとしてそこに窓を配置。目の前は隣の壁。そこに景色を作る。
景色を作った外側。ここには隣の壁があるが木製フェンスを使い紅葉を1本植えるだけでくつろぎの場所になる。

・「100年住まう家」への想い

この研修で繰り返し語られたのが、「100年住まう家」という考え方でした。

家族が増え、減り、やがて一人になり、世代が変わっても住み継がれる家。そのためには、可変性や補修のしやすさ、そして何より“使い続けたい”と思わせる魅力が必要だということ。

頭では分かっていたつもりでも、実際に現地でそれを「見て・触れて・感じた」ことで、自分の中で大きな気づきとなりました。

 

シンプルな構造。必要最低限の広さでも、窓や景色を作ることで、居場所を作り、無駄なスペースを作らない工夫。

・スマイルのこれからへ

この経験を経て、スマイルとしての家づくりにも新たな視点を加えていきたいと思っています。

リノベーションでも新築でも、ただ広さや部屋数ではなく、「人がどこで、どう過ごしたくなるか」という“居場所”を丁寧に設計する。

100年後も愛される住まいづくりへ、これからも挑戦していきたいという想いを込めて、ブログに残しておきたいと思いました